気まぐれメモランダム / でたらめフィードバック

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レビュー: 近藤銀河『フェミニスト、ゲームやってる』(晶文社)

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フェミニスト、ゲームやってる』は、2024年3月に惜しまれながら閉鎖されたWebマガジンWEZZYに掲載された連載をベースに、描きおろしを大幅に追加して刊行された近藤銀河初の単著です。私は取り上げられているゲームはどれもやったことなし、有名なタイトルだけ目にしたことがある、程度しかゲームに関心のない人間なのですが、この本はとても興味深く刺激的な内容でした。小説や映画などの片方向のメディアで受け手に求められるデコードのしかたはかならずしも明瞭とは限らず、故に批評の可能性が誤読といったかたちでも開かれます。操作によるユーザーとの共同作業が前提となるインタラクティブなメディアとしてのゲームの特質はその点においてはむしろ自由度は低いのでは?となんとなく思っていたのですが、著者は操作に対するためらいやとまどい、プレイの中断や放棄など、ゲームの求める規範の受容への抵抗にその契機を見て取ります。…
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『良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門』を読むにあたり気をつけたいこと

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諸事情あってITエンジニア本大賞2023技術書部門大賞受賞作の『良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門』(仙塲大也、技術評論社)にいまごろになって目を通しました。「設計」にかぎらない幅広いトピックをあつかう点で看板に偽りありですが、その手広さが支持された一因なのでしょう。ステップアップを図りたい初級者にとって有用なアドバイスが得られる本であることは確かだと思います。一方で個人的には見過ごせない記述もまま見られ、手放しでお勧めできる本でもないというのが率直な評価です。いくつかメモします。(用語は同書を踏襲します)

不変をめぐって

同書の強い主張の一つに「クラスは原則として不変にすること」があります。基本的には同意しますが、その主張のしかたには疑問があります。…
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本をつなぐ: 『小さなチーム、大きな仕事──働き方の新スタンダード』と『資本主義リアリズム』をコールセンターでつなぐ

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小さなチーム、大きな仕事──働き方の新スタンダード』(フリード、ハンソン, 2010)によると、ザッポス・ドットコム(靴を中心としたアパレル関連の通販小売店だそうな)のスニーカーはカスタマーサービスへの情熱により他とは違ったものになっているそうです。ザッポスでは、カスタマーサービスの従業員は対応マニュアルを使用せず、顧客と長時間話すことが許されている。(略)新入社員は(あとでどこに配属されるにしろ)まずカスタマーサービスでの電話の応対と倉庫での作業に四週間を費やす。 (フリード、ハンソン『小さなチーム、大きな仕事──働き方の新スタンダード』「競合相手」-「商品をありふれたものにしない」)一方で同書にはこんなことも書かれています。…
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本をつなぐ: 『ジェネラティブ・アート』と『かたち』をエルンスト・ヘッケルでつなぐ

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ジェネラティブ・アートをはじめるにあたってまずは読むべき本であると言えるピアソン『ジェネラティブ・アート』には多数の図版が掲載されていますが、その大半は(ある意味当然ではありますが)原著出版時の近作でアートワークのページに名前の掲載のない古い作品は数えるほどしかありません。そのうちの一つ、エルンスト・ヘッケルの作品は「Chapter 8 フラクタル」の直前に配置されています。ヘッケルについてはフィリップ・ボール『かたち』が彼の描いた精細で魅力的なスケッチとともに紹介しています。ドイツ・ロマン主義者としての、人種主義・反ユダヤ主義と結びついたナチズムにつながる姿を。ヘッケルのさまざまな考えは……ナチスに温かく迎えられた。[ヒトラー]がヘッケルの実際の仕事をどれほど知っていたのかは定かではないが、その哲学の影響は明らかだ。(ボール『
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Date, C.J.『標準SQL 改訂第2版 JIS/ANSI/ISO準拠』 - ソフトウェア技術書温故知新(その3)

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ソフトウェア技術書温故知新、第三回は1990年に邦訳が刊行されたC.J.デイト『標準SQL 改訂第2版 JIS/ANSI/ISO準拠』(トッパン)。https://www.amazon.co.jp/標準SQL―JIS-ANSI-ISO準拠-アジソン-ウェスレイ・トッパン情報科学シリーズ/dp/4810180190ああ憧れの第四世代言語(4GL)……と言う表現が適切だったのかはいまとなってはよくわかりませんが、Webアプリケーション普及前、クライアント / サーバーシステムのクライアントとしてWindowsマシンが用いられるようになった時代のほんの一時期、GUIをドラッグ&ドロップで簡単に作成できるRAD(Rapid Application Development)と呼ばれるプログラミング言語・環境が普及の兆しを見せたことがありました。Windows用としてはSQL WindowsやPower Builderといったあたりが有名どころと記憶していますが、Delphiや.NET化以前のVisual Basicもその文脈で使われた側面がありました。…
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レビュー: 久保田・畠中編『メディア・アート原論』

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収められている「短いコードを擁護する」という文章やライブ・コーディングに触れていることなどから手に取ってみたのですが。http://filmart.co.jp/books/nextcreator/media_art/読者が前提知識を共有していること前提の注釈の一切ないすごく不親切な作りの本で、門外漢の私には最初はわからないことばかり。幸い続けて読んだ『マテリアル・セオリーズ』に重なる話題が多く再読していくらか見通しが開けましたが、それでもすっきりと腑に落ちたわけではありません。二百ページ強というボリュームの制約もあったかとは思いますが、注釈を充実させてもっと開かれた本にしてほしかったところです。哲学からフリー・インプロビゼーション、クリエイティブ・コーディングまで思索の対象は広範な領域にわたりそれぞれについて興味深い論点を示唆しているのですから、アプローチの手がかりはいくらあっても多すぎることはないと思うのですが。…
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Alexandrescu, Andrei『Modern C++ Design』 - ソフトウェア技術書温故知新(その2)

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ソフトウェア技術書温故知新、第二回は2001年に邦訳が刊行されたアンドレイ アレキサンドレスク『Modern C++ Design』(ピアソンエデュケーション)。https://www.amazon.co.jp/Modern-C-Design―ジェネリック・プログラミングおよびデザイン・パターンを利用するための究極のテンプレート活用術-‐Depth/dp/4894714353かつてオブジェクト指向プログラミング言語としてC++が圧倒的な存在感を放っていた時期、多くの人に重宝された書籍が人類には早すぎたC++をなんとか安全に取りあつかうための手引書であることは論を俟ちません。もっとも代表的なのは『…
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レビュー: 毛利嘉孝『ストリートの思想』

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今年読んだ本のうち『社会にとって趣味とは何か』と『メディア・アート原論』に名前が出てきたし、昨年は『ele-king vol.22』掲載のインタビューも読んだし、でも単著は読んだことないや、というわけで毛利嘉孝の現在のところ最新の単著に目を通してみました。https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000911392009.html著者の経験や関わったシーンをベースに語られる1980年代から2000年代の光景は興味深く、ひとつの貴重な記録となっていますが、東日本大震災・民主党政権発足前の出版(奥付の発行年月日は2009年7月30日)のため決定的に古くなっている面があるのは否めません。この本の描いた「ストリートの思想」がそれらの望む方向に世の中を変えたかと言えば多くは否定せざるを得ないでしょう。ウィキペディアを「…
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久野靖『入門JavaScript(My UNIX Series)』 - ソフトウェア技術書温故知新(その1)

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諸般の事情により業務の学習で購入した書籍を整理することになり、けっこうな量をチャリポン経由で処分しました。しかし中には内容が out of date になっていても愛着があって手放せないものもあります。またそれらを見ていたら以前処分した本のことなどもいろいろ思いだしたりしました。そこでせっかくなのでいくつかを何回かに分けて紹介したいと思います。題してソフトウェア技術書温故知新、第一回はこちら、2001 年に出版された久野靖『入門 JavaScript(My UNIX Series)』(株式会社アスキー)。https://www.amazon.co.jp/入門-JavaScript-My-UNIX-久野/dp/4756138713
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祝人類補完機構全短編邦訳刊行完結

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先ごろ発売されました『三惑星の探求──人類補完機構全短篇3』を持ちまして、コードウェイナー・スミスの全短編の邦訳刊行が完了しました。あなうれしや。未訳作品の役者が伊藤典夫氏でないのは残念ですが、代わりが酒井昭伸氏であは文句のつけようがありません。それに、率直に申し上げて伊藤氏の翻訳を待っていたらあとどれだけかかったか……『第81Q戦争』の訳者あとがきで「近いうちにお目にかけることができると思う」と書かれて早二十年……ただ本の作りには少々言いたいことが。短編によってコメントがついたりつかなかったりして、しかもそのコメントに筆者名が付されていないというのはなんとかならなかったものでしょうか。コメントのあるものは"The Best of Cordwainer Smith"所収の作品で、故に筆者は同短編集の編者であるジョン・J・ピアスである、なんてことは予備知識がなければわからないでしょう。それにコメントを入れたのなら年表も欲しかったところ。またこれは完全に趣味の問題ですが、大野万紀氏の解説は萌えや二次創作といった話題に力点を置きすぎに感じました。…
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レビュー: 立岩、杉田『相模原障害者殺傷事件 ―優生思想とヘイトクライム―』(青土社)

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立岩真也と杉田俊介の著書『相模原障害者殺傷事件 ―優生思想とヘイトクライム―』(青土社)を読了しました。アマゾンのレビューの評価は妥当でないと思え、私なりの簡単なレビューを投稿したので、こちらにも掲載します(アマゾンでは星は四つにしました)。2017年7月26日に津久井やまゆり園で発生した事件に材を取った本。しかし事件そのものではなく、事件について語る上で踏まえておくべきものごとについて記されている。主な担当は立岩真也が歴史と原理(I)、杉田俊介が同時代性(II)。最後に二人が対話を交わしている(III)。二人は論考でも対話でも対照的で、その距離の隔たりが決して大部ではないこの本にふくらみを与えている。一般的に自明とされている前提も決してそんなことはないのだと立岩は指摘し、容疑者の考えに同調する人々や近い世代の人々の起こした犯罪、ヘイトスピーチのはびこる世相との関連について杉田は思いをめぐらす。…
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ディレイニー「エンパイア・スター」邦訳版変遷概要

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2014年末に国書刊行会から刊行されたサミュエル・レイ・ディレイニー『ドリフトグラス』はディレイニーの中短編をほぼ網羅した(残念ながら「ベータ2のバラッド」が未収)ファン待望の一冊。長らく入手困難だった諸作が手に入るようになっただけでも喜ばしいかぎりですが、目玉はなんと言っても酒井昭伸氏の手による「エンパイア・スター」新訳版収録です。「エンパイア・スター」の邦訳はこれで三度目。最初の邦訳は米村秀雄氏、こちらはサンリオ文庫より単独で刊行。二度目は岡部宏之氏によるもので、こちらは早川書房海外SFノヴェルズの『プリズマティカ』に含まれました。それぞれで単なる訳者の違いにとどまらない差異があるので、ここで簡単にその違いを追ってみましょう。…
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レビュー: 古川和男『「原発」革命』(文春新書)

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ずいぶん前に池澤夏樹氏のエッセイで目に触れて読んだ本をあらためて読みかえした。もちろん福島第一原発を念頭に置いてである。もはや軽水炉より有利というだけでは積極的に採用を進める理由にはならない。はたしてトリウム溶融塩炉は大規模災害に耐えうるか。「原発」革命結論から言うと、たしかにトリウム溶融塩炉には軽水炉より優れた点が認められるが、軽水炉にはない欠点もあり、災害の際の被害規模には関しては差がないように思えた。最大の障害は著者自身が触れているガンマ線の問題だろう。トリウム-ウラン核燃料サイクルで核分裂時に発生するガンマ線は通常運転時の炉の管理の障害としても未解決の課題とされているが、原子炉建屋が崩壊するほどのダメージを受けた際にはアルファ線やベータ線とはまた別のかたちの被害の拡大が予想される。影響範囲を考慮するとむしろひどいかもしれない。ガンマ線に関しては放射性物質のマーカとしてむしろ積極的な意味づけをされているが、自爆テロが一般的となった現代ではこの評価はあらためざるを得まい。また黒鉛の減速材使用も火災発生時の危険性を高めるように感じる。…
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西村佳哲『自分の仕事をつくる』を読む(6): 「1. 働き方がちがうから結果もちがう」 - 「柳宗理さんを東京・四谷に訪ねる」

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図らずもこの一連の文章は己の無知の告白にもなっているが、柳宗悦氏の息子がデザイナーであることもまた知らないことのひとつであった。おそらくいつかの作品には触れたことがあるのだろう。その経験は私の中にどのように息づいているのだろうかと思う。ものを使い、ものを介して人とかかわる以上、その経験が人に影響を与えないはずがない。生きてゆくということは、いろんな人の“仕事ぶり”に二四時間・三六五日接しつづけることだとも言える。そして、「こんなもんでいいや」という気持ちで作られたものは、「こんなもんで……」という感覚を、ジワジワと人々に伝えてしまう。(略)モノが沢山あるにもかかわらず、豊かさの実感が希薄な理由の一つはここにあると思う。(p.56)
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西村佳哲『自分の仕事をつくる』を読む(5)付記

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先の回でひとつ引用し忘れたところがあった。大事なのはコンセプトの精緻化より、むしろスタッフ間のコンテクスト(共有知)を育むことにある。いい仕事の現場には、その育て方が上手い人がいる。(p.53)多くの仕事は共同作業によって成りたっているのだが、そのことを意識している人はあんがい少ない。コンピュータのソフトウェア開発なんて孤独な仕事の最たるものと思われているかもしれないが、あにはからんや、ソフトウェア開発の過程で生み出されるものはすべてコミュニケーションのメディアであるといっても過言ではないくらいだ。残念ながらそうしたメタレベルの知識が教育される機会は少ない。結果共同作業という意識もつちかいにくい。そのためコンテクストの共有が大事になる、という点についてはあまり他の仕事と変わらない。…
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西村佳哲『自分の仕事をつくる』を読む(5): 「1. 働き方がちがうから結果もちがう」 - 「象設計集団を北海道・帯広に訪ねる」

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建築の世界にあまり明るくない私も象設計集団の名前は耳にしたことがあった――沖縄県名護市庁舎の設計者として。しかしそれもずいぶん前のこと、もう活動していないだろうと漠然と思っていたので、この本でその名を目にしたときには失礼ながら意外な気がした。しかも事務所は北海道の帯広。廃校になった小学校を驚くほど安く借りうけているという。町山一郎氏は言う――「『そんなにお金がなくても大丈夫』」となれば、やっぱり気楽に生きていける」(p.41)。この言葉は時間にかかわる。続く西村氏の文章を引いてみよう。手間暇を惜しまない仕事。こうした働き方が可能なのは、彼らが「時間」という資源を多く持っているからだ。そしてその「時間」は、仕事場の立地を選択することで、意識的につくり出されたのである。(p.47)
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西村佳哲『自分の仕事をつくる』を読む(4): 「1. 働き方がちがうから結果もちがう」 - 「深澤直人さんに聞いた働き方の話」

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あいだに挟まれたコラムのひとつで西村氏は深澤直人氏の語った次の言葉を記している。やはりモノをつくり出していく過程で体験できるいろんな物事を、もっと大切にした方がいい。それは宝のようなものだと、僕らは思うんです。(p.37)これは立ちどまって考える価値のある言葉だと思う。はたして私たちはいろいろな物事を体験できるようなものづくりの過程を経ることができているだろうか、と言い換えてもいい。気づいてみれば消費のサイクルは早まるばかりで最新型の商品はいくらもしないうちに新製品によって時代遅れにされ世の中から消えていってしまう。PCや携帯電話に至ってはもはや季節商品だ――春モデルに夏モデルに冬モデル。季節と機能が連動しているわけでもないのに、なんでそんなサイクルに乗っからなければならないのか? ロングセラーはなぜ生まれ得ないのか? 新製品の最大の価値はもはやあたらしいというそのものにしかないのか?…
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西村佳哲『自分の仕事をつくる』を読む(3): 「1. 働き方がちがうから結果もちがう」 - 「八木保さんをサンフランシスコに訪ねる」

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『自分の仕事をつくる』はインタビューに基づいて成りたっているが、インタビューを目的にしてはいない。そのためインタビューの分量よりもそれを元に著者の西村氏が検討したり考えたりした文章のほうが多い。故に引用もインタビューイのそれからよりも西村氏の文章からのものが多くなる。と、読んでいない人向けの断りを入れた上で、「1. 働き方がちがうから結果もちがう」の冒頭、「八木保さんをサンフランシスコに訪ねる」から文章を拾いあげよう。使い易いということは、何かを捨てているわけだが、はじめて使うデザインの道具がコンピュータという世代の彼らにとって、省略されたインターフェイスは、モノづくりをめぐる前提条件として学習・認識されてしまう。
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西村佳哲『自分の仕事をつくる』を読む(2): 「まえがき」

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まずは「まえがき」から文章を拾いあげてみよう。教育機関卒業後の私たちは、生きている時間の大半をなんらかの形で仕事に費やし、その累積が社会を形成している。私たちは、数え切れない他人の「仕事」に囲まれて日々生きているわけだが、ではそれらの仕事は私たちになにを与え、伝えているのだろう。(p.5)様々な仕事が「こんなもんでいいでしょ」という、人を軽くあつかったメッセージを体現している。(p.6)「こんなものでいい」と思いながらつくられたものは、それを手にする人の存在を否定する。(略)人々が自分の仕事をとおして、自分たち自身を傷つけ、目に見えないボディーブローを効かせ合うような悪循環が、長く重ねられているような気がしてならない。(p.6-7)
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西村佳哲『自分の仕事をつくる』を読む(1): はじめるにあたって

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働きはじめてからずっと、と言ってしまってはあきらかに言いすぎだが、それでもことあるごとに、働くことについて考えてきた気がする。少なくない人がそうであろうと想像するが、私もまた、できれば働かずに生きていきたい怠け者である。しかしいまの世の中よほどの好条件に恵まれないとそんな生きかたは無理だろう。当然のことながら私にもそのような条件はそろっておらず、口に糊するためには稼がなければならない。稼がなければ生きていけない世の中に対していささか含むところがないわけではないが、とりあえずその点については措いておこう。稼がなければならないという事実自体は、まあ認めるにはやぶさかではない。やぶさかではないが、できれば働きたくない――このふたつの事実だけを考慮するのであれば、労働と報酬が見あっていれば、つまりバランスが取れていれば問題はない、はずだ。言いかたを変えれば、割りきって働けるはずだ。…
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思わぬつながり

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この一、二ヶ月振りまわされてきた瑣事が収束の方向に向かいつつありスイッチが入ったのか切れたのか、この週末はひさしぶりに三冊六千円分も本を買ってきてむしゃむしゃ読んでおりました。そしたらそのうちの一冊、『9坪の家』(荻原修、廣済堂出版)にいろいろと見知った名前が登場するではありませんか。柏木博氏や鈴木博之氏はまあ想定の範囲内ですが、意表をつかれたのが柳宗理氏。というのも、氏の名前をはじめて拝見したのは今年読んだ本の中でいちばん印象深い『自分の仕事をつくる』(西村佳哲、晶文社)の中でだったからです。人の関心なんてものはまあそれほど幅がないものなのかもしれませんが、それでもこういう偶然はなんだか自分の来し方を振りかえらせるものがあります。…
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ムック: 『ZAIM とりあえず…閉館します』

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2024-08-10(Sat)追記:無効になったリンクを削除しました。横浜トリエンナーレ2005を機に開設され、トリエンナーレ2005終了後はアーティストや関係団体のスタジオ・事務所、イベントスペースとして活用されてきたZAIM。そのZAIMが2010年3月末でいったん閉鎖されるにあたりこれまでの足跡や入居者の声をまとめたムック。http://za-im.jp/php/news+article.storyid+448.htmはじめに重大な瑕疵を指摘すると、本書にはZAIMで開かれた展覧会の情報がほとんどない。数多く開催された有意義な展覧会の情報はなんとしても整理してすべて提示すべきであった。ZAIMの活動の意義を示すためにはそうすることがなによりもまず必要だったと考える。…
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