色についての理解を深めたいと思い、手始めにジョセフ・アルバース『配色の設計 色の知覚と相互作用 Interaction of Color』(BNN)を読みました。
事前の予想と異なり演習用の教科書で、副題の「色の知覚と相互作用」に焦点を絞った内容でした。補色だの色相環だの暖色・寒色だのと言った色彩理論や既存の色彩論への言及はほぼなし。いくつかの色を並べたときの見えかたについての実習の手順を示しての解説が大半です。『配色の設計』という邦題ははっきり言ってミスリーディングで、この本を読んでも効果的な色の配置のしかたなどの設計技法は学べません。商業的なデザインなどですぐ使える実践的な知識を身に着けたい人は別の本を選んだほうがよいでしょう。
この本の実習の目的は色の相互作用の理解にあります。それぞれ単独だと誤解の余地なく見えるシンプルな色が、いくつか集めて配置することによって異なる相貌を見せる様子をアルバースは丁寧にひも解き、何気なく見ているだけでは気づかない色の関係の多様さ・複雑さに気づくよう読者を導きます。皮相な「配色」に留まらない、より深く色のありかたを理解するための手順の解説と言えます。
実習にはカラーペーパー(色のついた紙)を集めて用いることとなっていて、そこまでは手を出さずにただテキストと図版を読んだだけですが、それでもたいへん興味深く読める本でした。色そのものに興味をお持ちの方は、手に取って実践すれば得るものは大きいと思います。