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「視覚障害学生石川准と東大図書館員河村宏:その1970年代から21世紀へ」に対するきわめて偏った瑣末な注釈の試み

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今年(2019年)の1月1日に立岩真也氏がたいへんおもしろい座談会を紹介されていました。

視覚障害学生石川准と東大図書館員河村宏:その1970年代から21世紀へ

話題の中心は石川准氏の勉学と協力する関係者の様子ですが、ちょうど情報機器、特にパーソナルコンピューターの発展する時期と重なっているため、日本での障害者による情報機器利用史にもなっていますし(初期のいわゆる「自炊」の話も出てきたり)、現状のアクセシビリティ関連の状況への批評ともなっています。

こういった話は貴重でたいへん興味深く読んだのですが、基本的には記憶に頼った発言なので少々正確さに欠ける面があるのは否めません。というかこまかいことを気にする俺ってどうなの?と思いつつ、せっかくなので気になる点は公開しておこう、ということでコンピューター関係のわかる範囲に勝手にささやかな注釈をつけたいと思います。

■ブレーリング/石川プログラミング学び出す/80年代前半PC事情

<立岩> バックスって何?
<河村> ユニックス。
<石川> 当時あそこレックという会社のユニックス・マシーンじゃなかった?

VAXはディジタル・イクイップメント・コーポレーション(DEC)が開発・販売していたミニコンピューターと呼ばれるカテゴリのコンピューターで、標準のOSはVMSと呼ばれるものなので、UNIXではなかったかもしれません(BSD、UltrixといったUNIXをOSにしていた可能性はあります)。あるいは「レックという会社のユニックス・マシーン」からVAXに接続していたのでしょうか。

<石川> で、Dベースも書いていたよね。だから、河村さんと僕は、ほぼ同時に、まず河村さんが勉強し、僕も勉強しみたいにして、ターボパスカルとDベース勉強したの。

商標的には「ターボパスカル」は「Turbo Pascal」、「Dベース」は「dBASE」という表記になります。どちらも一世を風靡したソフトウェア(前者はいまで言う統合開発環境、後者はデータベースソフト)で、後継版も(現在ではすっかり影が薄くなりましたが)現役です。

■1980年代、音が出るPCの登場

<立岩> 戻って来たときにはまだ音が出るやつ。
<石川> なかった。

標準で発声機能のついたNEC PC-6001mkIIの発売が1983年なので細かく言えばあるにはあったということになりそうです(使いものになったかは別の話)。

■日本語を話すPC/石川プログラミングを学び自ら開発する

<石川> そうそう。だからそのときまだ学生でいたはずなんだよね。その頃僕は一生懸命プログラミングの勉強していた。一番最初はカーニガンリッチのCプログラミングランゲージというのを、英語でね。それこそレコーディング・フォー・ザ・ブラインドで借りて、一生懸命聞いていたんだけど。

「カーニガンリッチ」は、書籍のかたちでは最初のC言語の解説である"The C Programming Language"の共著者表記「カーニハン&リッチー」(B.W.カーニハンD.M.リッチー)が文字起こしの際に混ざって認識されてしまったのではないかと思います。"K&R"なんて略されたりしていました。

■河村、東大図書館でコンピュータに取り組む

<河村> かもしれない。だけどその前にいくつか時代があるんだけど、最終的にはエプソンの端末を入れて、ブレーリングとつないでそれから大型計算機センターとつないだ。
<石川> そうすると、PC98の互換機ですね。当時はね。互換機。だから、それはもう80年代だもん。MS-DOSのエプソンの互換機が出てきたというのは、PC98がばっと爆発的に売れて、エプソンもじゃあ互換機作ろうとなった。
<立岩> 僕、最初に〔たぶん1987年に〕買った98は、エプソン〔のPC98の互換機〕です。
<石川> 80年代半ばだから。
<河村> だからCP/M〔Control Program for Microcomputer、1970年代にデジタルリサーチ(Digital Research Inc.)の創業者ゲイリー・キルドールによって開発、1976年に発売された、パソコン用のシングルユーザー・シングルタスクのオペレーティングシステム(OS)(Wikipedia)〕だよね、あの頃。

このあとエプソンのマシンがCP/MかMS-DOSかで石川氏と河村氏がやりとりしてますが、エプソンはPC-98互換機の前にもいくつかパーソナルコンピューター、というかハンドヘルドコンピューター(当時は持ち運びできるコンピューターをこう呼んだりしていました)を販売していたので、河村氏の話しているのはそちらではないかと思います。次のWebサイトによるとHC-20という機種以外はCP/Mマシンだったようです。

EPSONのハンドヘルドコンピュータ

CP/Mは8ビット版と16ビット版がありましたが、16ビット版はMS-DOSほどには普及しませんでした(MS-DOSの8ビット版は無視していいレベル)。

以上、どれも本題とはほとんど関係ない些末な点についての注釈でした。参考になりましたら幸いです……ってまあ参考にするほどのこともないか……

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