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Tracktion 5を試してみた

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With my favorite bicycle制作の際にSONAR強制終了の嵐に見舞われたので、別のDAWへの移行も考えたほうがいいかと思い、Working time is over now!制作にはTractkon 5を使ってみました。Tracktionについては、古いバージョンの話になりますが、ICONの記事「カルト的人気を誇るDAW「Tracktion」が遂に復活! Tracktion Softwareスタッフに訊く、復活までの経緯と今後の展開(プレゼントもあります!)」がくわしいのでそちらをお読みください。

選択のいちばんの理由はフリーなのでなんの気兼ねもなく試せること(Podium Freeも試したことあり)。もっともいまフリーのDAWと言えばStudio One 3 Primeでしょう。私のような余計なことを考えない人は素直にこちらを使えばよいと思います。

私の考える余計なことというのはベンダーロックインの軽減です。SONARを使っていた理由のひとつは組みこみのエフェクターに慣れていたからで、逆に考えれば組みこみエフェクターを使い続けるならSONARから移行できないわけです。今回のSONAR強制終了の嵐は組みこみエフェクターにからんで発生したので、組みこみエフェクターを使うのであれば別のDAWでも同じことが起こらないとはかぎりません。またSONAR組みこみエフェクターは年季の入ったものも多く、いつ使えなくなってもおかしくありません(実際SONAR X1 LEにあった古いリバーブはなくなりました)。そこでVSTエフェクターを別途用意してDAW組みこみのものを使わないようにすれば制作環境の自由度を高められるのではないか、と思ったわけです。こう考えるとStudio One 3 PrimeはVSTを利用できないので残念ながら目的にあわないのでした。

前置きが長くなりました。肝心のTracktion 5の使用感は、私の制作スタイルだと必要充分というところ。多くのDAWはレコーディングスタジオを模して全体を構成しますが、そのモデルをウィンドウアプリケーションによる音楽制作という観点から整理・再構成した感じで、クロスプラットフォームに対応するためのソフトウェアライブラリ"JUCE"使用もあり独特の雰囲気をたたえてはいますが、すこし使ってみるとおおよそはつかめます。これは機能が整理されて提示されていることによる点がおおきく、初期状態で表示されるバルーンヘルプの内容と操作用コントロールのラベルを読むだけでおおむね操作可能でした(ただし他のDAWの操作経験がなければむずかしいかも)。モーダルダイアログが存在しない点も手早く操作できて好印象("Don't mode me in"ですね)。ただしそれはできることに制約があるということでもあるでしょう。いまのところ私はぶつかってはいませんが。層が薄くて何をやっているか内部処理がわかる気になるところは好きです。

ファイル管理も今風で、SONARなんか外部ファイルはとにかくコピーして自分の管理下におくというやりかたをいまでも貫いていますが(まあこれは古いOSでいろいろたいへんな目にあったからでしょうが)、Tracktionは参照情報でも管理できて、その参照情報も手作業で修正できます。すべてのスライダーで数値入力が可能で、こまかい調整でいらいらしないところもいいです。

エフェクターもフリーのDAWとしては充実しているほうです。Podium Freeなんてなにもないですからね。一覧は次:

  • Volume and Pan
  • Level Meter
  • 4-Band Equalizer
  • Reverb
  • Chorus
  • Phaser
  • Compressor/Limitter
  • Pitch Shifter
  • Low/High-Pass Filter
  • MIDI Modifier
  • MIDI Patch Bay
  • Patch Bay
  • Aux Send
  • Aux Return
  • Text
  • Freeze Point
  • ReWire Device
  • Sampler(synth)

リバーブは重宝するのではないでしょうか。フリーのリバーブって個人的にはなかなか見かけません(以前はREAPERReaPlugsに含まれていましたが、いまはありませんし)。

とまあ私にはかなり好感触なDAWですが、誰にでもおすすめというわけにはいきません。いちばんおおきいのはヘルプが行方不明という点で、ユーザーインターフェースが日本語化できないのはまあなんとかなる人が多いでしょうが、操作方法の説明がないのはどうにもなりません。Webを検索して出てくる情報を頼りにするしかないというのはやっぱりなかなかたいへんです。いちばん参考になるのはTracktion 日本語版ヘルプかと思いますが、かなり前のバージョン用のものですし、いつまで残っているものやら……

あとは次のあたりでしょうか:

  • 字・コントロールが全般的にちいさい(英語が基準だから……)
  • MIDIのステップ入力はそんなに機能は充実していない
  • VSTのスキャンを手動で行わなければならなず、インストールしただけだと使えないかとに一瞬錯覚する

また当然のことながらてんこ盛りの素材などはついてこないのでまったくの初心者にはお勧めしかねます。リッチなユーザーインターフェースや機能が好きな人にも向きません。そういった意味ではかなり利用者を選ぶDAWではありますが、なにしろフリーですので、他のDAWを使っていて不満を感じていたりする人はちょっと試してみてもいいのではないかと思います。

最後に追加情報。DTMステーションの記事「無料のDAW、Tracktion 4 Freeを使ってみた」ではモニターを返すまで一手間かかる旨が記されていますが、Tracktion 5ではこの点は解消されています。

2017-01-21(Sat)追記: 新規プロジェクト作成時のName(プロジェクト名)やLocation(保存ディレクトリ)に日本語が使えないことを確認しました。うーん、これは地味に痛い。Tracktion後継のWaveformはメディア・インテグレーションが輸入代理店契約を締結と報じられていますが、果たしてこのあたりは手当てされるでしょうか……

2017-02-07(Tue)追記: 日本語化修正パッチが公開されていました。

2017-05-21(Sun)追記: メディア・インテグレーションTraactkon製品取りあつかいがはじまったのでWaveform体験版を試してみましたが、残念ながらファイルやディレクトリ名への日本語利用はTracktion 5と同様できませんでした。要望を送ってみたので、改善されるといいな。

2017-05-23(Tue)追記: Waveform、DTMステーションでも紹介されて、もしやと思い言語設定を日本語に、フォントを日本語表示できるものに設定したらファイルやディレクトリ名への日本語利用ができるようになりました。

2017-09-07(Thu)追記: Tracktion 6=T6 DAWがフリーになりました。

2018-08-12(Sun)追記: Tracktion 7=T7 DAWがフリーになりました。

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